最近、「デジタル採点」という言葉を耳にする場面が増えたのではないでしょうか。
多忙化が叫ばれている学校で、先生がテストを採点する方法が大きく変化しようとしています。
一方「デジタル採点」って何?という方もいらっしゃると思います。
この記事では、2022年からデジタル採点を使用していることで得た知見をまとめます。
はじめに
従来の採点方法とは?
こちらは、ほぼご想像通りです。手書き解答に、手書きで一つ一つ赤ペンなどで正解や不正解、部分点を〇、✕、△等の印をつけながら採点します。そして、電卓をたたき、各設問の配点に従って点数を合計して点数を答案に記入します。
デジタル採点とは?
よく誤解されますが、採点作業が完全に自動化されるわけではありません。正解や不正解の判断は人間が行います。しかし、人為的なミスを減少させるために、「切り出し採点」「自動点数集計」「自動採点」などたくさんの機能が備わっています。採点の時間と労力を大いに削減できる期待が持てます。
デジタル採点の利点
切り出し採点
同じ問題番号の解答欄を全員分並べて採点できる機能です。該当の解答を短期的に頭に記憶するだけで済むため、作業が効率的に進みます。
また、従来は数問採点してから、答案をめくるという作業を繰り返していました。この「答案をめくる」という作業は意外に時間がかかります。めくりすぎて次第に指の油分がなくり、めくりづらくなります。
1人ずつ全問採点してめくれば、めくるプロセスは減りますが、模範解答と答案を交互に見比べる作業を繰り返すため、かなり疲れます。解答を暗記した頃に、全員分の採点が終わってます。
自動点数集計
採点がすべて終わると、予め設定した配点に基づいて合計点を自動で計算、答案へ表示されます。
さらに複雑なのが、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3つのカテゴリ別で集計する必要があるということです。
例えば100点満点中、「知」に40点、「思」に40点、「主」に20点のような配点がされており、各設問はこれらのカテゴリのいずれかに属しています。
デジタル採点では、予めどの設問がどのカテゴリに属するか設定しておけば、正解・不正解の判断だけでカテゴリ別に集計され、合計点とともに答案に表示されます。
この作業を電卓片手に手動で行うことはとても時間と労力と費やします。また、点数がcsvファイルで出力されるので、入力の手間が省けるのもありがたいです。
自動採点
この機能が、デジタル採点の最大の魅力です。記述式でなく、記号問題のような「客観式の問題」の採点において、効果を発揮します。
例えば、「ア、イ、ウ、エ」といった、記号で解答する問題では、読み込んだ文字を自動的に認識して採点をしてくれます。もちろん、脱字などで誤って採点されることもありますが、これらは人の目で修正します。しかし、高い精度で自動採点が行われるため、人の判断回数を大幅に軽減し、時間と労力を減らすことができます。
脱字については、機械で誤認識されるということは、人が見ても判断が難しい文字ということです。また、消し跡が残ってたり、文字が薄かったりして誤認識する場合もあります。こういったことを踏まえ、生徒へ文字を丁寧に書くよう指導する良い機会となるでしょう。
分析
クラスや学年の平均点、各問の正答率などが出力されます。また、他教科のテストと合わせて合計点や順位を出す機能もあります。
デジタル採点の課題と注意点
セキュリティに関して
- 「インストール型」と「クラウド型」の特徴
- 答案返却時に注意すべきこと
- 答案の紛失や汚損、改ざんリスクが「ほぼゼロ」
「インストール型」と「クラウド型」の特徴
システムは大きく「インストール型」と「クラウド型」の2つのタイプに分けられます。
どれをメリットとして捉えるか、またデメリットとして捉えるかは、環境により異なるため、それぞれのタイプに関するリスクを理解することが重要です。
型 | 特徴 |
インストール型 | PCにソフトウェアをインストールし、それを使用して採点します。 読み込んだ答案は、そのPC上で処理されます。 |
クラウド型 | 複数のクライアントがブラウザなどを介してログインして利用します。 採点システムはAWS※などと連携しており、答案はサーバにアップロードされて処理されます。 ※AWS・・・Amazon Web Services |
答案返却時に注意すべきこと
採点した答案をプリントアウトして生徒に返却すれば特に問題ありません。しかし、データで返却する場合は、送信先が間違っていないか、全員分の答案が連なったPDFファイルを個人に送っていないか、よく確認する必要があります。
答案紛失、汚損、改ざんリスク「ほぼ0」
自宅で採点するために答案を持ち帰る必要がないので、失くすことは絶対ありません。後で触れますが、使うソフトによっては、インターネットを介して自宅のPCからアクセスして採点ができます。自宅でコーヒー飲みながら採点して答案を汚してしまう、というリスクもありません。
余談ですが、答案返却の際、生徒が不正解の解答を正解に書き換えて申し出る「答案の改ざん」という行為があります。もちろん、このような行為は望ましくありませんが、デジタル採点を使用する場合は、こうした改ざん行為が発生する可能性はほぼないと考えられます。
コストに関して
買い切りの「インストール型」や、年間使用料が発生する「クラウド型」など、料金体系は多岐にわたります。明らかに時間と労力を節約できる優れたシステムであっても、予算の都合からあきらめざるを得ない教育機関が多く存在します。これは非常に残念なことです。
また、答案をスキャンする際のコストや、採点した答案を印刷して返却する場合には、用紙やトナーなどのプリントアウトに関わるコストが発生します。その一方で、赤ペンの消費は減るため、具体的な影響については一概には言えません。
新しいものに対する理解
こうした新しいものが現れると、変化に抵抗する勢力が現れることが一般的です。セキュリティ面やコスト面、さらには「1枚1枚気持ちを込めて採点するものだ!」といった精神論まで出てきます。
できない理由を見つけることは容易ですが、推進する側が丁寧に説明を続け、システムを使用することで得られるメリットを実際に示すことで、少しずつ理解が進むことでしょう。新しいものへの適応は時間がかかります。
覚悟を決めて答案を広げる必要はありません。隙間時間にタブレットを開いてサッと採点する様子は非常にスマートです。この様子を見た人が、試してみようと思えるとよいですね。
おすすめの自動採点システム
結論「百問繚乱」がおすすめ
株式会社シンプルエデュケーション が提供している「百問繚乱」がおすすめです。
「切り出し採点」等、先に紹介した機能はほとんどの会社が提供していますが、個人的に一番魅力と感じているのは、次の項目で紹介している「数式の自動採点機能がある」ところです。いくつかデジタル採点を提供している会社に問い合わせた範囲では、この機能があるのは「百問繚乱」だけでした。
料金は他社と比較して高めですが、その価値は十分あると感じました。
学校規模 | 1年間ライセンス料金 |
6学級以下 | 90,000(税別) |
7学級〜18学級 | 120,000(税別) |
19学級以上 | 150,000(税別) |
使用する先生の数に制限は無い校内フリーライセンスです。
数式の自動採点機能がある
2 桁以上の数字・正負符号・分数・平方根・簡易な文字式・カッコや不等号などの記号といった、中学数学程度の数式を自動採点する機能です。いくつかデジタル採点を提供している会社に問い合わせた範囲では、この機能があるのは「百問繚乱」だけでした。
例えば、以下のような答案を自動で採点してくれます。
クラウド型である
これはどのデジタル採点システムにも共通して言えることです。
「インストール型」は、各端末にシステムを個別にインストールしたり、生徒氏名を読み込むなどの初期設定が個々のPCで必要です。この段階でPCに不慣れな人がつまづくことがあり、システムの利用までたどり着けない場合があります。
一方、「クラウド型」は、ブラウザを通じてログインして利用するタイプです。生徒の氏名や教員ユーザーの登録は、PC操作に慣れた人が事前に管理者IDで設定しておきます。その後、各教員は自身のIDでブラウザにログインするだけで、システムを利用することができます。
また、この「クラウド型」は、答案データをサーバにアップロードして採点します。例えば、A先生は問題1,2を採点、B先生は問題3,4を採点といった具合に、1つのテストを複数の教員で手分けして採点することができます。
校外で採点できる
専用のURLからアクセスして、自宅など校外で採点することができます。
校外で採点する際は、クラス・番号・氏名の個人情報は見えないようになっているので安心です。○✕△をつける採点機能のみ使うことができます。答案のアップロードや点数のダウンロード等、一切できません。
おわりに
デジタル採点は、これからどんどん現場に導入されることでしょう。
主観ですが、いくつかのシステムを比較検討した結果、株式会社シンプルエデュケーション が提供している「百問繚乱」で問題なく運用できると判断しました。そして、実際に1年以上利用しても問題ありませんでした。
多忙を極めている先生方は、このようなデジタル採点システムを比較検討する時間すらないことも想像できます。もし参考になる情報であれば幸いです。
また、他社のシステムでも無料お試しできるところがほとんどです。今回紹介した百問繚乱についても無料で試せますので、公式サイトの「お問い合わせ」から相談してみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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